本文へ


◎勝訴判決・和解の報告    [4]杜撰なリフォーム工事に対し債務不履行責任による慰謝料と弁護士費用を認めた事例(大阪地裁平成17年10月25日判決) 三浦直樹(大阪・弁護士)

トップ > 欠陥住宅に関する情報 > ふぉあ・すまいる > ◎勝訴判決・和解の報告    [4]杜撰なリフォーム工事に対し債務不履行責任による慰謝料と弁護士費用を認めた事例(大阪地裁平成17年10月25日判決) 三浦直樹(大阪・弁護士)

勝訴判決・和解の報告
[4]杜撰なリフォーム工事に対し債務不履行責任による慰謝料と弁護士費用を認めた事例
大阪地方裁判所平成17年10月25日判決
弁護士 三浦直樹(大阪)

Ⅰ 事件の表示(通称事件名:空堀事件)
判決日 大阪地方裁判所平成17年10月25日判決
事件番号 平成16年(ワ)第4292号 損害賠償請求事件
裁判官 谷村武則
代理人 三浦直樹
Ⅱ 事案の概要
建物概要 所在 大阪市中央区谷町
構造 木造(在来工法)2階建 規模 敷地37.95㎡  延面積30.17㎡
備考 3階建に増改築
入手経緯 契約 平成14年4月16日 引渡 平成15年2月1日(未完成)
代金 古家付土地の購入代金270万円、リフォーム代金500万円
備考 追加工事代金59万円
相談(不具合現象) 揺れ、雨漏り等
Ⅲ 主張と判決の結果(○:認定、×:否定、△:判断せず)
争点
(相手方の反論)
①不法行為(詐欺・建造物損壊) →×(故意なし)
②契約解除 →○(既履行部分を含む)
③瑕疵担保責任 →×(工事未完成のため)
④詐欺取消 →△(選択的併合関係のため判断せず)
⑤信義則違反の抗弁 →×(原告側に安全性欠如容認の認識なし)
欠陥 構造計算もなく、強度や接合部に対する配慮も乏しく、接ぎ木を多く用い、柱、梁、外壁等のいず れも端部の処理が杜撰であり、特に増築された3階部分は物干し場を作る程度の簡易な工法で施工されるなど、全体として杜撰な工事であり、建築基準法所定の 構造強度を大きく下回る危険な建物である。
損害 合計 834万円/2228万円  (認容額/請求額)
代金 560万円 / 560万円
補修費用 730万円 / 850万円
転居費用
仮住賃料
慰謝料 50万円/ 600万円
調査鑑定費 4万円/16万円
弁護士費用 50万円/200万円
その他
責任主体と法律構成 売主
施工業者 ○ 債務不履行責任(建築士と同一人物)
建築士 ○ 債務不履行責任(施工業者と同一人物)
その他

Ⅳ 鑑定等について
1 裁判所鑑定人等の人選(又は相手方の私的鑑定人の資質)について
申請せず。

2 不利な専門家意見(鑑定書等)を建築技術論的に乗り越えた方法(立証上の工夫等)について
技術的反論なし。

3 不利な専門家意見(鑑定書等)を訴訟技術的に乗り越えた方法(主張や訴訟行為上の工夫等)について
不利な専門家意見なし。

Ⅴ コメント
1  判決分析(意義・射程・問題点等)
建築士事務所登録をしていない無登録の一級建築士によるあまりにも杜撰な増改築工事リフォーム事案である。
判決も、工事の杜撰さを厳しく指摘した上、請負の債務不履行解除は特段の事情のない限り未施工部分に関する一部解除に限るとする最高裁 S56.2.17に照らしてもなお、既履行部分も含む契約全体の解除が認められると判断した上、債務不履行責任として慰謝料と弁護士費用を認めた。
詐欺ないし故意の建造物損壊行為とまでは言えない、として故意の不法行為責任は否定されたが、過失責任に言及されていない点には不満が残る。

2 主張・立証上の工夫
余りの危険さに台風シーズン前には解体補修する必要があったため、提訴時には、解体補修済みで、いわば「現物」が存在しない状態であったが、当初は高 名な建築家による「作品」の制作過程の記念と思って原告が撮り続けていたという多数の写真や、被告の下で作業を担当していた大工自身が被告の杜撰さを指摘 する証言を撮影したビデオなどについて、反訳を兼ねた詳細な報告書を作成した。

3 所 感
裁判官からの補充尋問に対して、被告自身が「危険と言えば危険、安全ではないと言えば安全ではない」と証言するほど、工事の杜撰さについては争いようのない事案であった。
無資格者による無益な工事である「悪質リフォーム」の事案や、有資格者の任務懈怠という過失による「名義貸建築士」の事案等に比べても、より悪質な「建築家詐欺」というべきケースであり、建築士制度のあり方を根本から考え直す必要を感じた。

ふぉあ・すまいる
ふぉあ・すまいる新着
新着情報
2023.11.14
第54回岡山大会のご案内
2023.06.12
2023(令和5)年7月1日(土)欠陥住宅110番のご案内
2023.06.08
第53回名古屋大会配信用URLを通知しました
2023.05.17
第53回名古屋大会のご案内(2023.5.17)
2022.11.18
第52回東京大会のご案内(2022.11.18)