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②パネルディスカッション    [4]阪神・淡路大震災の立法動向 神崎 哲(京都・弁護士)

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阪神・淡路大震災10年目の検証
② パネルディスカッション
[4]阪神・淡路大震災後の立法動向
弁護士 神崎 哲(京都)

1 はじめに
シンポジウム『阪神・淡路大震災10年目の検証』は、立法・司法・行政等の動向における成果と課題を見直そうという企画でしたが、私は、これらの動向の横断的な一覧表の作成とともに、立法に関する報告を仰せつかりました。

2 10年間の立法動向
(1) 最も大きな動向としては、建築基準法令はじまって以来の大改正とも評される平成10年改正ということになります。非常に大きな改正のため、3段階・3年に分けての施行となりました。
重要な柱としては、①確認・検査業務の民間開放、②中間検査制度の導入、③単体基準の見直しによる詳細な技術基準化と性能規定化(施行令から告示へ)等でしょう。
①②について、欠陥住宅問題において確認検査率の低迷が一因として指摘される中、確認検査体制の抜本的見直しが必要となり、行政機関による対応に限界 があるとして民間開放されました。民間機関による確認検査業務の良し悪しはさておき、行政が自らの責務を果たせなかったことは事実でしょう。何となく司法 改革論議が弁護士人口のみの増加をもたらしたことを想起させる展開です。
③について、法令による技術基準の精密化それ自体は、評価規範(裁判基準)として用いるには明確になったでしょうが、反面、行為規範としては、ますま す複雑多岐に亘り「判りにくい」法令となる傾向が指摘されているところであります。安全基準の向上は歓迎すべきですが、それとは別に「判りやすい」立法技 術的工夫も欲しいところで、それが法令遵守、ひいては安全にも繋がると思います。
我々が訴訟等で留意すべき点としては、例えば地盤調査義務にせよ木造の耐力壁配置や仕口の緊結等にせよ、平成12年告示は、阪神大震災を受けて創設的 に規定したものではなく、従前から当然に規制されていたものを注意的に規定したにすぎない、というあたりでしょうか。かかる観点からすると、平成12年告 示を、それ以前の建物についても参照することは問題ないはずです。

(2) 基準法令の改正の中では、平成14年改正によるシックハウス対策規制の導入も非常に重要と言えます。この規制自体は、創設的規定という性格のものですが、 しかし、室内空気環境に関し健康を害しないように配慮すべき注意義務は、この改正以前から当然に存したはずです。つまり、シックハウス対策規制の具体的行 為規範として立法されたものですが、これがシックハウスに対するモノサシのすべてではないことを銘記すべきでしょう。この議論のゆえに、瑕疵基準論をむや みに実質化することには危惧感を抱きます。

(3) 平成12年4月に施行された住宅品質確保促進法も特筆すべき法律でしょう。住宅性能表示制度および住宅紛争処理機関が予想されたほど利用されておらず「企 画倒れ」の感は否めませんが、10年間の瑕疵担保責任の強行法規化、売買における瑕疵修補責任の明定等、瑕疵担保責任の特例は、欠陥住宅紛争の予防・解決 にとって極めて大きな役割を果たしているものと思われます。

3 立法における課題
制度の根幹に関わる問題は、立法なくして解決できません。
建築士法の改正しかり。設計・監理を施工から独立させて安全に対するチェックを機能させるためには、建築士の地位の確立・向上が不可欠であり、建築士 法の改正問題は懸案とされてきました。ただ、監理の適正化をめざすならば、むしろ、建築士の職務内容自体の独立性を追及すべきでしょう。日弁連土地住宅部 会でも議論している「施工からの監理の分離・独立」を確保するための仕組や資格制度等は、そのための強力な一試案と言えましょう。
また、建築生産システムを改革するためには、建築法制の改正を検討するだけでは不十分です。むしろ、システム外の建築をとりまく経済的要請こそが改革 の原動力になる可能性が高いのです。住宅融資制度と確認・検査制度との連携は従来から指摘されているところです。その際、融資自体を根本的に規制しなくと も、例えば、不動産登記法により完了検査済証を建物保存登記手続の必要書類とすれば、建物に担保権設定をするために完了検査のパスが要請されることになる でしょう。
さらに、欠陥住宅被害の救済にとって大きな障壁となっているのが、住宅供給者の資力問題です。宅建業者の営業保証金制度を拡充するとともに、建設業者にも同様の保証をもたらす保険制度(強制)を創設すべきです。
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