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◆第19回神戸大会特集  ◎勝つための鑑定書づくり 是正工事見積書作成 中神岳二(千葉・一級建築士)

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勝つための鑑定書づくり
是正工事見積書作成
一級建築士 中神岳二(千葉)

1 調査報告書との見積の関係
私的鑑定書は、設計(欠陥等の指摘)、施工方法(是正方法)、施工費(見積)という構成からなると思います。自分で作成した調査報告書(設計)につい ては自分自身が一貫して作成するため、自ら是正方法を検討するので特に問題になることはないと思いますが、ただ私の場合は、被害者のご理解を得た上で得意 とする分野の先生と共に現場調査をし、是正方法については一緒に検討したうえで調査報告書に是正方法を記述していただくか、もしくは是正工事報告書を別途 作成していただき、その是正方法に従って見積書を作成するといった方法を取っています。また是正工事方法を明確に記述してある報告書や、是正工事方法及び 図面まで作成された是正工事報告書の場合(設計図があり施工方法が示されている)は現場の状況を把握できませんがなんとか是正見積書を作成することができ ます。一方、欠陥についてのみ記述があり是正工事方法を明確に記述していない場合(設計図はあるが…施工方法が記していない)、是正工事方法を考え、見積 書に裏付け書類として添付しなければならず見積作成に手惑います。後者の場合はよく弁護士からの依頼が多く見られます。

2 弁護士との綿密な打合せ
一般的な建築見積は工事種別であり仕上げ等同じものはすべてまとめ、また共通仮設費、諸経費はすべての工事費にかかるものとして計上しますが、弁護士 の求める見積書は(裁判官に理解されやすい…)欠陥の場所ごとに計上する見積書(瑕疵一覧表に沿ったものなど)で建築とはまったく異なるまとめ方であり、 見積書作成前に弁護士が建築士にどのような見積書を求めているかを必ず確認し綿密に打合せしなければなりません。たとえば仮設工事費を各欠陥部位別に計上 したり、また内外装工事費や躯体工事費を方向別に(東西南北)分けたり、また欠陥別に分類された項目別合計金額に比率(共通仮説費、諸経費はすべての是正 工事金額により比率が変化する)を乗じて共通仮設費(準備費、仮設建物、工事施設、環境安全費など)、諸経費(現場管理、一般管理費など)をそれぞれの項 目別区に計上しなければなりません。このあたりが是正工事見積書と一般的な補修工事見積書と違う点です。是正工事金額を欠陥ごとに(瑕疵一覧表のように) 分けなければならない場合が多々あるということです。また瑕疵を認める場所とそうでない場所などの区分けを想定して弁護士と綿密な打合せをしなければ、再 度見積書作成をしなおすという結果になります。

3 見積書の数量と単価の根拠
私の場合、工務店の見積書において使用できる数量(たとえ数量が多くてもそのまま転記)、単価(あまりに一般的と言えない単価は除外)は利用します (新築費用相当の場合は勿論ですが…解体費のみを加算)。なぜなら数量、単価については相手から反論できないからです。上記以外の場合では数量の計上につ いても必ず壁の面積を計算した根拠や図面などを添付します。また単価も裏付けのある建設物価、積算ポケットなどを使用します。さらに複合単価の作成につい ても同様、裏付けのある歩掛り(建設工事標準歩掛など…損失補償算定標準書の歩掛編は便利です)、裏付けのある材料単価を添付します。私の見積書作成にお いてなぜ補償コンサルタントの単価を使用したかについてですが、まず単価根拠がはっきりしている事。補修、揚げ家など単価があること(エクセルでデーター ベース化していること)。補償における単価の基になるものは建設物価であり、積算ポケットなどであること。また公共事業における立ち退きの補償見積と同様 に裁判所の判決による是正金額や和解による是正金額も同様に感じたからです。また建築士と補償コンサルタントの方の考え方とは少し理解しづらい部分がある ように感じますが、数量計算をいくら丁寧に積み上げても結果、客観性が認められなければ何の役にも立たないところ。建築設計見積の新築工事においては細か く積み上げ、単価を掛け明確に金額をはじき出していますが、補償コンサルタントの方の考え方はある意味においてとても大雑把な部分がある反面、根拠など (単価など)についてはしっかりと裏付けを求めてきます。裁判の上でも同様是正工事金額に客観性を持たせるためにはどうすべきかと言ったところはまさに用 地取得の補償に似ていると思ったからです。以上から数量、単価、共通仮設費、諸経費率などすべてにおいて裏付けを100%添付し、裁判官に対し客観性、妥 当性を印象付けることが大切だと思います。

4 客観性のある見積書作成への労力
客観性のある積算をするものとして、一番大変なのが裏付けの作成だと思います。建築士の方はご理解いただけると思いますが、前述のように100%の裏 付けを作成するには多大な労力を必要とします。私の作成する是正工事見積書(一般的な在来工法の2階建て程度)は講演中に見ていただいたと思いますが、表 紙、金額など一般でよく見られる見積書部分は5、6ページで残りの100ページ以上はすべて裏付け書類となります。単価(材量費と工賃)の根拠から始ま り、複合単価(材・工単価が無い場合…一旦撤去し、再設するなど)の根拠、またその歩掛り(たとえばあるものを撤去する為に何人工必要になるか)の根拠、 数量の拾い書(是正工事のための解体数量や仕上げの為の範囲を求める計算など)そして、数量算出の為の裏付け図面などなどとなります。4、5日で100 ページを超える根拠ある見積書を作成するには、表計算を駆使、また単価根拠となるものをPDF化して使用する単価をマークし、さらにアクロバットソフトを 使って製本、ページ数を入れて印刷する。この作業に多大な時間がかかるため、是正工事見積書で100%の裏付けのある見積書が少なかったのではと思いま す。今後も皆様のご意見等を伺いながらさらに良い是正工事見積書を作成していきたいと思います。
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