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◎パネルディスカッション「問題鑑定にどう打ち勝つか!~具体的事例をもとに~」   [2]パネリストの報告     ①「たれ流し基礎」の欠陥性を否定した鑑定を覆す 河合敏男(東京・弁護士)

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パネルディスカッション
問題鑑定にどう打ち勝つか! ~具体的事例をもとに~

[2]パネリストの報告

① 「たれ流し基礎」の欠陥性を否定した鑑定を覆す
弁護士 河合敏男(東京・弁護士)

1 東京高裁平成12年3月15日判決の事案は次のようなものです。
1審(浦和地裁川越支部)において,裁判所選任の鑑定人による鑑定が行われ、鑑定書は本件建物の「たれ流し基礎」について欠陥性を否定し、1審判決も これをそのまま採用した判決を下しました。欠陥でないとした理由は、①基礎は、沈下や亀裂等の不具合現象が出ておらず、現状で安定していると考えられるか ら瑕疵でない、②施行令の鉄筋コンクリート造の規定は、木造住宅の鉄筋コンクリート基礎には適用ない、というものです。私は、1審判決後に鑑定人に面会を 求め、欠陥判断の基準や本件建物の基礎が法令上欠陥と考えざるを得ないことを説明し、説得しました。その結果、鑑定人は全部ではありませんが、ある程度鑑 定意見を訂正すべきことを約束してくれました。そこで、直ちに鑑定人の陳述書を作成して署名捺印をもらい、これを東京高裁に提出し、あわせて鑑定人尋問を 申請しました。鑑定人尋問は採用され、鑑定人は1審における自分の鑑定書の一部について、訂正する旨証言してくれました。その後、裁判所の勧告で和解が続 けられましたが成立せず判決言い渡しとなり、1審判決を覆して、基礎の欠陥を認定し、その補修費用として1020万円を認めました。問題鑑定について裁判 外で鑑定人と議論するということも一つの参考となると考えて、ご紹介した次第です。

2 司法支援建築会議から推薦された鑑定人の鑑定について、東京高裁で反対尋問をした経験があります。同鑑定書の内容は、瑕疵はいずれも軽微なもので数十 万円で補修可能というものです。鑑定人の現地見分(予備調査)の際に、鑑定人が補助者として使っていた地元の大工に対して、「こんなものは、30万円で直 る」などと口走っていたことが後で判明し、公正さを疑っていたのですが、案の定、ひどい鑑定内容でした。反対尋問では、判断基準が恣意的であること、明ら かに間違ったデータを記載していること(床傾きが1000分の11なのに、1000分の1.1と主張していること)、鑑定書そのものの信用性が疑われるこ と(補助者を使って鑑定したとの記載があり、現に沢山の補助者を使っているが、その補助者の名前を明かそうとしないこと)などを追求しました。裁判所は、 同鑑定書を採用せずに、取壊建替費用相当の損害金を認容しました。

3 何故、おかしな鑑定が出てくるかについて、上記のような最初から公平性を欠く鑑定人の場合は論外として、中立的に真面目にやろうとしている建築士で あってもおかしな内容の鑑定書が出てくるのが現状です。これは、根本的には欠陥判断の基準を知らないということになりますが、心情的な部分も大きいと考え ます。即ち、建築士という職業の人は、建物を何とか直そう、救済しようという性癖(職業病)があります。それは、日常の設計・監理の仕事の中で常に直面し ている事柄であり、それを何とかうまくまとめるのが建築士の力量という意識があるからです。「こんな建物は取り壊して建て替えよ。」と言ってしまっては、 建築士としての能力を疑われると考えているのではないでしょうか。おそらく、鑑定人は、その建物が「住居」であること、そこに人が居住し苦しんでいること を忘れ、その建物を一つの「物」としてしか考えず、継ぎ接ぎだらけであってもその「物」を救うことばかりに目がいってしまうのだと思います。被害者が求め ているのは、ただ直ればよい、継ぎ接ぎだらけでも構造安全性が回復されればよい、とは考えていません。新築建物としての機能性、構造安全性、意匠性の全て が回復されることを要求しているのです。耐震改修を求めているのではなく、新築性回復を要求しているのです。このように、建築士(鑑定人)の基本的な思想 面から根本的に再認識してもらう活動が必要なのではないかと考えます。
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