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 建設省、 『監理放棄建築士』 を厳しく処分する通達を発布

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岩城 穣(大阪・弁護士)
1、 建設省は 1999年12月28日付けで、 「建築士の処分等について (通知)」 と題する通達を発布した (建設省住指発第 784号)。 これは、 建築基準法の改正 (98年6月12日)、 建築物安全安心推進計画 (平成11年4月6日建設省住指発第 163号) を受けて、 建築士の懲戒処分の強化を図るために、 処分基準を定めたものである (なお、 これに伴い、 従前の通達 (昭和59年12月13日建設省住指発第 467号) は、 廃止された)。 その要点は、 次のとおりである。

1 基本方針
建築士の業務の適正を確保するため、 建築士が、 建築士法第10条第1項に規定する処分事由に該当するときは、 迅速かつ厳正に処分等 (処分及び文書注意をいう。) を行う。
2 建築士の懲戒処分等の基準
建築士の処分などの内容の決定は、 別表第1に従い行う。
なお、 過去に処分等を受けている場合は、 別表第2に従って別表第1に従い決定した処分等を加重する。
3 処分等に伴う措置
(1) 業務停止の処分を行った場合は、 処分期間満了まで建築士の免許証を領置する。
(2) 免許取消の処分を行った場合は、 建築士の登録を抹消し、 免許証を返納させる。
(3) 免許取消又は業務停止の処分を行った場合は、 当該処分に対する違反がないよう監視し、違反があったときは、 さらに処分・告発する。


2、 そして、 別表第1は、 ①禁錮以上の刑に処せられたとき (建築士法10条1項1号) と、 ②建築関係法令に違反し、 又は業務に関して不誠実な行為をしたとき (同2号又は3号) に分け、 それぞれについて詳細な処分基準を定めている。
注目されるのは、 ①について厳しい処分を定めたばかりでなく、 ②について詳細な 「懲戒事由」 を列挙し、 それらについて交通違反の点数制のような 「処分ランク」 を定めていることである。
いわゆる監理放棄建築士の関連でいえば、 設計及び監理の業務の逸脱違反設計、 工事監理不履行・工事監理不十分、 建築士の名称使用・名義借り、 名義貸し、 虚偽の確認申請、 工事監理者欄虚偽記入などはすべて 「重大な違反」 として処分ランク6=業務停止3カ月とされ、 工事監理報告書の未提出・不十分記載や工事完了検査申請懈怠は処分ランク4=業務停止1カ月とされている。
そのうえ、 「情状等による加減」 があり、 違反を常習的に行っている場合 (+3ランク) や事後的な是正 (損害賠償) に対応しなかった場合 (+1ランク) など、 さらに処分を加重するとされている。 例えばランク6 (業務停止3カ月) に該当する行為があり、 それに常習性が認められればランク9 (業務停止6カ月) となるのである。
加えて、 別表第2は、 過去に処分歴がある場合は、 今回相当とされる処分をさらに加重するとしている。 具体的には、 過去の処分事由が前記のような 「重大な違反」 に該当し、 今回も 「重大な違反」 に該当する場合は免許取消とする、 過去の処分事由と今回の処分事由が異なる場合は+1~3ランク、 処分事由が同一の場合は+2~4ランクとする、 などが定められている。

3、 この新通達は、 建築士の名義貸しや監理放棄が横行していることが、 現在社会問題となっている欠陥住宅問題の原因の一つとなっているという認識に立ち、 これに対して厳しい処分によって対応していくことを表明したものといえる。
これまで全国の弁護士有志で2回にわたり、 監理放棄建築士に対する一斉処分申立の取り組みを行ってきたが、 今後は個別にでも積極的に処分の申立を行っていく必要がある。
また、 これらの監理放棄建築士に民事賠償責任を認める判例はまだ少数であるが、 この通達やそれによる処分結果を積極的に裁判所に証拠として提出することにより、 建築士の監理放棄が欠陥住宅を産み出す不可欠の構成要素となっていることを、 裁判所に認識してもらう必要があると思われる。

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