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アメリカ発〝恐怖の家〟翻訳  粟生猛 (北海道・弁護士)

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粟生猛 (北海道・弁護士)

アメリカ滞在中に日本の住宅問題を取り扱った問題新聞記事に接しました。 アメリカの日本の住宅問題について考え方などが読み取れる記事だと思い、 以下の通り翻訳してみました。 参考になれば幸いです。

『建築行政・建築施工の実態が多くの日本人に無価値な家を保有させている』
マーク・マグナイアー

千葉県山武町, 日本
糸賀長子さんは3250万円で建てた自宅の畳をめくり, 基礎から殆ど完全にはずれている床隅の梁を見せた。 更に, 不安定な屋根の支持部分・傾いた廊下・完全に腐食して地面が露出している床板を指し示した。
「このめちゃくちゃな施工を見て怒り心頭に発し, 役所の建物の前で石油をかぶって焼身自殺を図ろうとまで考えましたが, 娘に生きてこの欠陥についての責任を追及すべきだと言われて思いとどまりました。」
どの国でも, 家は家族にとって精神的・経済的な基盤である。 しかし日本では, 多数の人々にとってその家がむしろ重荷となっている。 数千人にのぼる人々が, 建築行政や建築業界の施工実態が, 築後15年も経たないうちに彼らの家を無価値なものにしていることに気が付き始めている。
1995年1月早朝, 神戸を襲ったマグニチュード7・2の地震で6400人もの死者がでた。 倒壊した44万棟の建物の瓦礫の撤去作業が進む中で次のような事実が明らかとなった。 有名会社によって新築された多くの建物が倒壊しているのに対して, 古い建物 (その中には外国製の建築資材や技術を使ったものが含まれる) がしっかりと立っているのである。
1996年, 日本消費者情報センターは3400件以上の住宅の品質に対する苦情を受け付けた。 これは大震災以前の2倍であり, その後も苦情の電話は鳴り止んでいない。 東京地裁は, 昨年4月, 住宅専門部を設け, 300件以上の訴訟が係属している。
「日本は最高の技術をもった大工によって1300年前に建てられた建物が今もしっかりと残っている国です。」 消費者欠陥住宅監視グループのメンバーであり、 學建築研究所所長の伊藤學 (一級建築士・工学修士) 氏は言う。 「しかし, 建設業者は建築コストを削減して利益を上げることだけに関心を持っており, そのために, 建物の質は悪化するばかりです。 そして, 建設省も建設業者と同類なのです。」
各種法規や業界は国民に持ち家を勧めている。 しかも, 中古住宅ではなく新築住宅を持つことを奨励している。 新築住宅の購入者は, 中古住宅の購入者には認められない住宅ローン控除その他の優遇税制が認められる。 住宅販売に占める中古住宅の割合は, アメリカの76パーセントに対して, 日本ではわずか11パーセントである。
家屋が老朽化して壊れはじめると (通常築後2~30年), 原則として家屋は取り壊される。 住宅ローンの方が家の寿命より長くなる場合もある。 家屋の平均寿命はアメリカの44年に対して日本では26年に過ぎない。 積極的な政府の後押しを受けた新築住宅への融資政策においては35年ローンの当初の10年間は利息が2・75パーセント以下に抑えられているため, 住宅購入者がその経済的能力を超える新築住宅を購入することが極めて容易となっている。
アメリカでは, 家屋の価格が下落したときは銀行に譲渡しローンの負担を免れることができる。 しかし, 日本ではそのような制度は認められておらず, ローン全額について購入者個人が全責任を負担しなければならない。
しばしば, 築後20年経過すると, 家の価値はゼロ以下となり, むしろ130万円かけて解体したうえで不要なスクラップとして撤去しなければならなくなる。
「終わりのないスクラップ・アンド・ビルドです。」 シノハラ・フミオ (NLI調査機関 (シンク・タンク) 主任調査官) は言う。
傾いた壁や手抜き施工にクレームをつける消費者は, 程なく彼ら自身の障害にぶつかる。 消費者の苦情は通常, 業界と行政で組織された委員会で処理される。 建設業界は多数の就業者を抱える巨大な雇用主であり, 主要な政治資金提供者であると共に, しばしば建設省の退職者の天下り先となっている。 また, 建設業界は伝統的にみずからの活動を規制する建築関係立法において大きな影響力を行使していると消費者グループは指摘する。
一旦消費者が苦情をこの委員会に持ち込むと, 訴訟提起をすることはできなくなり, 消費者の解決手段は更に減少させられる。 他方, 建設省は建設会社のプライバシーを侵害するという理由で, 家屋購入を予定している人に対して, 苦情が頻繁に寄せられている企業名を公表することを拒んでいる。
建設省の役人と業界関係者は, 種々の組織的な欠陥があることは認めるが, 行政と業界の間に特別な関係は存在しないと主張する。 彼らは, 2000年に制定された品確法や新しい検査システムの設置を取り上げて, 欠陥は改善されていると主張する。 しかし, これらに従わないことに対する制裁は殆どない。
「日本では, 建設業界だけではなく, 消費者ではなく企業を保護し, 質より量に重点が置かれる傾向が強い。」 とホント・シン国土交通省紛争処理機関の主任は言う。

2002年3月28日付「ハートフォード・クーラント The Hartford Courant」(米コネティカット州の地方紙)
マーク・マグナイアーは「ロサンジェルス・タイムズ」記者

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