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パネルディスカッション 「シックハウス問題の本格的解決をめざして」 (5) シックハウスの処理~ホルムアルデヒドはどこから 田坂圭子 (大阪・(社)全国消費生活相談員協会理事)

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パネルディスカッション
「シックハウス問題の本格的解決をめざして」


(5) シックハウスの処理~ホルムアルデヒドはどこから
田坂圭子 (大阪・(社)全国消費生活相談員協会理事)

シックハウス対策のための規制がもりこまれている改正建築基準法が、 いよいよ平成15年7月1日から施行される。 これによりホルムアルデヒドやクロルピリホスによるシックハウスは多少減少に向かうであろう。 しかし、 これまでに建築された住宅等でホルムアルデヒドやその他のVOC(揮発性有機化合物)が室内気中に存在し、 それらによりシックハウス症候群に悩まされている人々はまだまだ多く居られると思う。
厚生労働省が濃度指針値を定めているVOC13物質のうち、 新築等の室内で多く見られる物質には、 ホルムアルデヒド・トルエン・キシレンがある。 これらが多量に存在した場合は窓等を解放、 室内空気の流通を良くしてこれらを早期にとばすよう今までも指導してきた。
確かにトルエン・キシレンは6ヵ月位でほぼ残存が見られなくなってしまうことが多いが、 ホルムアルデヒドだけは施工後5年間毎日窓等を解放するなど努力しても、 なお指針値の5.7倍も室内に残存しているという事実をつかんでいる。 すべてがそうであるとはいえないが、 専門業者によるきっちりとした測定の結果であるから間違いのないところであろう。
このような場合、 どの部位からそのホルムアルデヒドが溶出しているかを特定し、 その部位を撤去・取り替えで、 速やかにホルムアルデヒドの溶出がなくなりシックハウスから解放されることにつながるのである。
ところがその 「どの部位」 の特定に当たっては、 従来ならばその室内大気に接しているあらゆるもの・・・天井・壁・床・建具・家具を幅10㎝長さ70㎝切り取り、 しかるべき試験機関で測定しなければならなかった。 しかし、 その切り取った後の部分の修復は、 「誰が」「どのようにして」行うかの問題が発生する。 この場合、 その切り取り部分のみの完全な修復は不可能に近く、 すべてを施工仕直さなければならないだろう。
そこでこの度考案し特許取得したのが 「ホルムアルデヒド溶出部位非破壊特定法」 である。 これは、 ホルムアルデヒドを非常に吸着しやすい布(10㎝×10㎝)をテスト対象物に当て(現場までは密封状態)、 その上を布より大きめのフイルム(約15㎝×15㎝)で被い、 そのフイルムの四辺を隙間なく接着テープでテスト対象物に貼り付け、 布がテスト対象物に密着するとともにテスト対象物とフイルムの間に布を密封する。 このようにして72時間放置した後、 取り出した布をチャック付きビニール袋に個別に入れて密封し、 テスト部位名をその袋の外側に明記、 契約試験機関に送付する。 その結果、 それぞれの部位の布へのホルムアルデヒド吸着量が測定される。 この吸着量を比較しその差で溶出部位を特定する。 シックハウスになった室内では、 突出して多く溶出している部位がみられる。 これを踏まえその部位の撤去・張り替え等によりホルムアルデヒドの溶出はなくなり、 シックハウスから解放されるのである。
あるシックハウスでは、 新築と同時に購入した本棚の後ろの合板からの溶出が原因であったり、 備え付けの飾り棚が発生源であったりで、 住宅の構造物質そのものがシックハウスの原因でなかった事例もあった。
この手法のメリットは、 ①テスト対象物を破壊することなくホルムアルデヒド溶出部位を特定 ②テスト費用が安価 ③テスト布の輸送が簡易 ④ホルムアルデヒド溶出部位を特定する ことでその部位の製品メーカーに対し製造物責任法を適用して責任を問える(住宅は不動産のため製造物責任法が適用されない)。
平成12・13年頃までに建築された住宅では、 まだまだ建材メーカーのホルムアルデヒドに対する意識も低く、 他のVOCも含めてシックハウスを出現させ、 そこに居住する人々をシックハウス症候群に陥れていることもあるだろう。
現在も室内気中のホルムアルデヒドの濃度が高い場合、 その溶出部位を特定しその部位の撤去・取り替えでホルムアルデヒドの溶出をなくし、 健康な住宅にすることがベストではないかと思われる。

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