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勝訴判決の紹介と獲得のポイント   (1) 建物の不同沈下について宅地造成業者と建物建築業者に連帯して約1900万円の賠償を命じた判決(大阪地裁平成14年5月9日判決)  田中厚 (大阪・弁護士)

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弁護士 田中 厚(大阪)

■コメント
1 判決分析(意義・射程・問題点等)
建物の不同沈下の原因及び被告らの責任について、 原告の主張をほぼ全面的に認め、 宅地造成業者と建物建築業者の双方に施工上の過失を認め、 共同不法行為により、 全損害につき連帯して損害賠償を命じたものであり、 被害救済判例として意義がある。
補修方法についても、 原告の主張を全面的に認めた点は評価できる。
損害論については、 被告の具体的主張も裁判所からの釈明もなかったのに判決でいきなり、 ①補修費用のうち 「内外装補修工事費」 を本件建物の建築後の経過年数を加味して415万円を150万円に減額したこと、②工事原価のほかに 「諸経費」 を要することは当然であるのに、 「具体的に必要となる根拠があきらかでない」 として否定したことは、 判決内容としても、 手続的にも問題 (審理不尽、 釈明義務違反、 弁論主義違背) である。 慰謝料についても、 原告らが 「生活の本拠たる建物の不同沈下のために瑕疵ある住宅に居住することとなったこと並びにその長期間にわたる解決のため被告らとの交渉及び訴訟をせざるを得なくなったこと」 を認定しながら、 100万円しか認めなかったのは不十分である。

2 主張・立証上の工夫
当初の依頼者の相談は、 建物建築業者に対する責任追及であったが、 平野建築士の鑑定の結果、 擁壁の設置の瑕疵も一因であることが判明したため、 両社間での責任転嫁を防ぐため両社の責任を共同不法行為として構成して、 提訴した。 訴訟の進行において各当事者はそれぞれ私的鑑定を提出したが、 被告両社の間で相手方の過失を主張・立証し合う展開となり、 双方の責任を主張・立証すべき原告にとっては、 訴訟を有利に進めやすい流れとなった。
最初の裁判官は、 当事者から私的鑑定が提出された段階で、 被告両社に過失があることを前提に和解を勧告したが、 被告が強く反発し、 その後裁判官が転勤により交替となり、 交替後の裁判官は建築紛争がよく分からないとのことで、 強引に付調停とされた。 しかし調停では、 建築士の調停委員の見解に問題があったこと、 被告が徒に現地調査の継続を主張するため、 打ち切りを求めて訴訟手続に戻し、 判決を追求したのが結果的に良かった。
本件では、 被告建築業者の柱状改良体が支持層に到達していないために建物の地盤沈下が生じたと原告が主張したのに対して、 被告建築業者はこれを激しく争い、 柱状改良体は支持層に到達していたが造成業者の盛土の転圧不足のために圧縮沈下が起こりその際の負の摩擦力により柱状改良体が破損したため沈下が生じた旨主張して、 これが最大の争点となっていた。 被告建築業者の上記主張を裏付けるために出廷した技術者証人に対する当方の反対尋問にあたり、 協力建築士 (平野憲司建築士) と技術的・専門的事項についても十分打ち合わせ、 検討をして、 負の摩擦力の大きさの計算根拠について突っ込んだ反対尋問をした結果、 同証人が、 被告の主張に沿った結論となるように負の摩擦力が働く中立点までの距離や、 摩擦応力度の数値設定をして鑑定書を作成した経過が明らかになり、 被告の前記主張が排斥された。
判決では損害額をやや減額されたが、 造成工事・建築工事が終了して引き渡した昭和62年、 63年を不法行為時としてそこから年5分の遅延損害金を請求していたため、 これを合わせると認定された損害の7割増しとなる。 このように建築後年数が経っていて、 過失が明らかな場合は不法行為構成の方が十分な賠償が得られるのでよい場合もある。

3 所 感
双方控訴により現在大阪高等裁判所で控訴審の審理中であるが、 よりよい高裁判決を得て確定させるよう引き続き努力したい。

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