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勝訴判決の紹介と獲得のポイント   (5) 木造2階建増改築で建替が認められた事例(京都地裁平成14年9月24日判決) 神崎哲 (京都・弁護士)

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弁護士 神﨑 哲(京都)

1. 建物及び契約概要
本件建物は、 京都府長岡京市の丘陵地帯にある木造在来構法2階建の戸建住宅である(ちなみに、 この丘陵は、 京都盆地の西側、 嵐山から向日市、 長岡京市を経てサントリーの山崎まで続く丘陵であり、 南北に非常に長いことから 「長岡」 の地名がついたという。 美しい竹林の丘だが、 その一帯は地盤沈下被害が少なからずある)。
契約としては、 ①もともと水回り等の増改築を注文したところ、 ②構造材腐朽のためにほぼ全面解体となり、③解体の結果、 基礎に亀裂があり無筋と判明したため基礎も施工し直し、 というように請負の範囲が順次拡大していったという特殊な経緯がある。 玄関部分だけ旧建物が残された 「増改築」 契約である(代金1560万円)。

2. 判決の欠陥論
判決では、 ①軟弱地盤なのに基礎幅不足の垂れ流し基礎、 ②壁量不足、 ③土台と基礎の緊結不良(ずれている)といった欠陥が認められ、 建替費用の損害賠償が命じられた。
判決の特徴その1。 増改築契約においても構造安全性確保が要求されるか(増改築ゆえ欠陥判断基準が異なるのではないか)という争点について、 判決は、 増改築の場合、 旧建物の構造等による制約のため新築同様の安全性確保まで契約内容になっていない場合があるとしつつも、 本件では結果的に増改築に伴う制約はないとして、 基準法の単体規定を充たすことが最低限の内容と判断した。
判決の特徴その2。 数値上の軟弱地盤であるものの(但し、 実はSS試験の結果分析にも争いがあったが)、 建物に目立った不具合現象が未だ現れていないにもかかわらず、 建替が認められた。

3. 欠陥論に功を奏したと思われる立証活動
第1に現場見分。 不具合が明白でないことから若干の迷いはあったものの、 建物立地が坂道発進困難なほどの著しい傾斜地であること、 隣地とかなり高低差があること等を実感してもらえたと思う。
第2に、 近隣建物が地盤沈下により数㎝もの幅のクラックを生じている写真を提出し、 将来予測される不具合現象を示せたこと。
第3に、 証人尋問に代えてラウンドテーブル法廷での弁論準備手続(2時間)において、 山本一級建築士(建築構造士)・小坂一級土木施工管理技師の意見を聴くという特殊な手法をとり、 地盤と基礎を中心に欠陥が強調できたこと(正確に心証を取ってもらえるし、 裁判所としても、 調書作成が不要で、 専門家調停委員にでも質問するような感じで訊けるので、 受け入れてもらい易いように思う)。

4. 判決の損害論等
もっとも、 この判決は損害論において、 (1) 建替費用につき、 私的鑑定書の見積額を排し、 請負代金額に基づき1712万円と認定。 (2) 転居費用20万円と(3) 鑑定費用50万円を認めたのはよいが、 (4) 建替期間中の賃料、 (5) 弁護士費用、 (6) 慰謝料を否定した点は極めて不合理・非常識であり、 結果として2690万円の請求に対し約1928万円の認容にとどまった。 他方、 業者側の残代金請求約713万円を認容しており、 当方は同時履行の抗弁権を主張したので引換給付判決となった。

5. 所感
本件は、 判断に困った裁判官が調停回付を再三要求したため、 つい魔が差して付調停に応じてしまい、 半年以上のロスを生じた。 意匠専門の建築士調停委員が全く無理解であり、 理不尽な譲歩を迫り、 調停を打ち切るにも一苦労であった。 つくづく欠陥住宅被害は人災であり、 裁判手続でも二次被害の危険が高いと感じた次第である。

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