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建築士制度の動向 下村憲一 (札幌・建築士)

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新しい建築設計制度と建築士法
下村 憲一 (札幌・建築士)

欠陥住宅など、 建築に関する問題の原因を辿っていくと、 日本の場合、 一つの要因として設計者の資格基準、 資格制度に問題があるのではないかと認識されています。
さらに、 設計者の人数を国別に比較すると、 日本の一級建築士の登録者数は29万人と人口比率では世界一ですが、 実際の建築設計者はそのうちの25~30%にすぎません。 その他の70~75%の方々は、 少なくとも設計とは違った構造や設備、 施工、 あるいは行政、 メーカー、 商社など、 違う分野で携わっているとみられます。 ところが、 今の士法では、 全ての建築士が設計を出来る資格となっています。
日本建築士制度は、 昭和25年に時限立法で制定された建築士法によって建築士の資格に業務独占を与えてきました。 一級建築士の資格を持っていれば、 CPDと呼ばれる継続職能教育も必要なく、 一度資格を取ると死ぬまでその人が判をつけば、 確認申請を出すことが出来ます。
日本の高度経済成長期も含め、 戦後の経済社会の発展を進めていく上でも必要とされ、 うまく機能して建設業界とともに成長することができました。 しかし、 改正もなく今日までずっと我国の設計者資格制度になっています。 建築士の資格制度に関わる世界の動向をみても大きく日本とは違っています。
こうした背景の中で、 平成12年7月、 建築技術教育普及センターに<建築設計資格制度調査会>が設置され、 <資格制度>についての本格的議論が始まりました。
<調査会>は国の参画も得て、 建築関係五団体 (日本建築学会、 日本建築士会連合会、 日本建築士事務所協会連合会、 日本建築家協会、 建築業協会) の会長を中心に構成され、 主として①法的制度も含め、 今後の国内資格制度を、 国内、 外の社会的状況の変化を踏まえて、 どう抜本的に見直すべきか、 ②資格制度の国際化対応をどう考えるかの二点について検討が進められています。 殊に①の国内資格制度改善はわが国の建築界にとって、 十数年来に及ぶ懸案の課題であり、 先の社会的動向を考えれば、 建築界の合意として、 現実的な着地点を見出すべき時期に来ていると考えるべきでしょう。
日本建築士会連合会及び日本建築家協会は、 こうした社会的要請に応えるべく、 各々の立場から、 長年の議論の成果も踏まえて、 新たな建築資格制度の現実的な着地点を探り始めました。
日本建築士会連合会は建築士法をベースにした社会的制度としての 「専攻建築士制度」 の創設を、 日本建築家協会はUIAの基準との整合性を視野に入れた 「建築家資格制度」 の創設を提案、 次の段階として、 二会合意をふまえ、 一本化に向けての検討を進めようとしています。
日本建築家協会 (JIA) では随分昔から、 現在の日本の設計者資格制度は、 消費者、 市民には利益に薄く、 時代にそぐわない制度であると訴えてきました。
国際建築家協会 (UIA) が推奨するUIAスタンダードに近い資格制度を国内法として日本でも持たなければ、 日本は国際的にも孤立し、 日本の消費者、 市民の利益保護にもならないと考えています。
新しい資格制度は、 設計者の立場を守るがために創るのではなく、 あくまでも日本の都市環境、 あるいは建築を良くすることを目指しているものです。 そのためにも改革は避けては通れず、 建築教育から最後のCPDまで一貫した流れをもった新たな設計者資格制度が確立されることが望まれます。 それをきちんとしない限りは、 いつまでも欠陥住宅、 欠陥建築が建てられ続けることでしょう。
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