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欠陥住宅と消費者契約法

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野々山 宏(京都・弁護士)

はじめに
1994年、 消費者取引において商品の安全性をはかる民事ルールとして製造物責任法が制定された。 製造物責任法制定以降、 商品の安全性と車の両輪でありながら、 これまで十分な民事ルールがなかった消費者取引における契約の適正化に関しても新たな立法化が検討されてきた。 6年の検討を経て、 2000年4月消費者取引の契約の適正化をはかる民事ルールとして消費者契約法が制定され、 2001年4月1日から施行される。
消費者契約法は、 事業者と消費者には情報の質・量や交渉力に格差があることに着目して、 消費者契約における不公正な勧誘や契約条項から消費者を守る規定である。 その効果は契約の取消や契約条項の無効である。
住宅など不動産取引も対象となっている。 商品の瑕疵や欠陥に対応することを目的としているわけではないので、 欠陥の修補や損害賠償、 欠陥の存在自体を理由とする契約の解除が消費者契約法で認められるわけではない。 しかしながら、 住宅の環境や品質に関する説明、 あるいは瑕疵担保責任などに関する約款などについて、 不動産取引にも消費者契約法の適用場面は多くある。

【消費者契約法の内容】
消費者契約法の主な内容は、 以下のとおりである。
(1) 消費者と事業者の間で結ばれた消費者契約を幅広く適用対象としている (但し、 労働契約を除く) (2条、 12条)。 従来の業法のように、 法律の適用範囲に例外や限定がない。 住宅販売や建築請負も、 事業者と消費者との契約である限り適用がある。
(2) 事業者に消費者契約の内容についての情報を提供するよう努力することを明記した (3条)。 今後は、 事業者は消費者に判るように商品の内容や取引条件について説明することが求められる。
(3) 契約を勧誘するときの事業者の不適切な行為に対して消費者に契約を取消す権利を与えた (4条)。 悪質商法などは契約勧誘時に不適当な方法を採るので、 以下の誤認行為と困惑行為があった場合に消費者に取消権を付与して契約を解消することができるようにした。
〔誤認行為〕
ア、 重要な事項に関して事実と違うことを説明したとき。 (例) 事故車をそうでないと言って販売したとき。
イ、 将来の変動が不確実な事項についての断定して勧誘したとき。 (例) 「この株は絶対上がります」 といって勧誘したとき。
ウ、 重要な事項に関する消費者の不利益な事実を故意に告げないとき。 (例) 元本割れの危険を述べない投資信託の勧誘。
〔困惑行為〕
ア、 住居、 就業場所からの不退去による勧誘行為。 (例) 帰ってくれ、 もういらないと言ったのに帰らないセールスマン。
イ、 勧誘場所から帰さない勧誘行為 。 (例) 用事がある、 時間がない、 いらないと言ってもしつこく長時間勧誘して店から出られないとき。
(4) 予め事業者が作ってある契約条項などの内、 事業者の責任を免除する免責条項 ((例) 「一切責任を負いません」) や過度な損害賠償を定める条項 ((例) 「中途解約の場合は一切返金できません」 「支払が遅れたら家賃の2倍を支払ってもらいます」) は消費者に一方的に不利益な条項として無効とした (8条、 9条)。 契約条項について消費者は知らないことも多いし、 それを拒絶することは事実上できないので、 不当な条項は排除できるようにしたのである。
(5) 免責条項や損害賠償の予定以外でも、 信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効となることが一般的に規定した。 (一般条項。 10条)。 例えば、 最近のアパ-ト賃貸借契約にある自然の劣化部分をも含めた過度な原状回復条項などはこの規定によって無効となる可能性がある。

【住宅取引への適用】
欠陥住宅の補修や建替は債務不履行、 瑕疵担保責任、 不法行為責任などこれまで蓄積されてきた法理論で救済を図ることになるが、 契約の際の説明に問題がある場合や契約書、 約款に問題がある場合には消費者契約法による救済が可能である。
宅建業法35条記載の重要事項などについて売り主である事業者が事実と異なることを述べたときは 「不実告知」 により (消費者契約法4条1項1号) 契約の取り消しが可能となる。 事実と異なることについて故意は必要ない。 たとえば建坪率や容積率について誤ったことを述べ、 思うような建物が建てられなかったときや、 将来立て替えることを予定しているのに接道義務を満たしているかについて誤った説明をしたときには、 契約を取り消せる可能性がある。
建売住宅の場合にその構造や品質などの契約の重要な事項に事実と異なる説明があった場合に契約の取り消しが可能となってくる。 重要な構造部分に手抜きの建売住宅でありながら、 手抜きはないことや建築基準法を満たしていることを売り主側が積極的に告げている場合には売買契約の取消の可能性がある (4条1項1号)。 手抜きであることを全く告げず隠している場合には、 4条2項の 「不利益事実の不告知」 が適用される可能性がある。 「不実告知」 や 「不利益事実の不告知」 は第一次的には売買契約の一方当事者である売り主が行ったかどうかであるが、 売り主が仲介業者など第三者に説明等を委託した場合には委託を受けた者について判断される (法5条)
建築等請負契約においては、 請負人あるいはこれから委託された者が建築される建物の適法性について誤った説明をした場合などに消費者契約法の適用が考えられる。
契約条項については、 住宅品質確保促進法の制定後、 約款も変わっていくと思われるが、 法8条、 9条で瑕疵担保責任の免除約款や過大な損害賠償の予定が無効となる。 その他請負代金の一方的な変更権を請負人側に認める約款は法10条でその合理性が問題とされることになろう。
消費者契約法は本来欠陥の是正を目的にしたものでないため、 欠陥住宅問題の特効薬とはならないが、 今後、 住宅取引契約の締結の場面と契約条項について各事例別に消費者契約法の適用が可能かどうかを検討していく必要がある。                        以 上

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