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欠陥住宅訴訟に関する近時の動向 神﨑 哲(京都・弁護士)

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神﨑 哲(京都・弁護士)
本年5月10日と6月12日、 吉岡和弘幹事長、 澤田和也先生、 伊藤學先生、 河合敏男先生と私の5名で、 最高裁事務総局に赴き、 欠陥住宅訴訟のあり方について協議を行ったので、 報告したい。

まず、 最高裁側は、 ①適切な鑑定人を探すのが困難、 ②審理のノウハウの蓄積が不十分、 ゆえに、 ③審理が長期化し、 専門的知見に基づく適正な判断も困難といった課題を指摘したうえ、 昨年各地裁での「鑑定人等協議会」の開催、 今春の東京・大阪地裁での「建築紛争事件集中部」の設置等、 ①専門訴訟の適正迅速な処理、 ②審理のノウハウの蓄積、 ③裁判官・弁護士の専門化促進に向けた取組が紹介され、 その一環として、 本年7月に「建築関係訴訟委員会」の設置を決定したことの報告があった。 これは13名(建築士8名、 裁判官OB2名、 弁護士2名、 一般人1名)の委員会で、 建築紛争審理中の裁判所より鑑定人候補者推薦依頼を受けて「司法支援建築会議」(日本建築学会が設立した鑑定人候補者の団体)に候補者選定依頼を行う等、 鑑定人・調停委員の供給システムを担うものらしい。 そして、 機動的な活動のために分科会を設け、 そこに特別委員として欠陥住宅紛争に取り組む弁護士等に参加してもらい、 現場での課題をフィードバックしてゆきたい意向とのことであった。

これに対し、 我々サイドからは、 以下のような問題を指摘した。
まず、 訴訟審理のあり方について、 ①本人訴訟等と異なり、 弁護士が適切な私的鑑定書に基づき請求している事案では欠陥判断は容易で、 裁判所鑑定も付調停も必要ない。 このように事案を類型化して検討すべき。 ②本来、 裁判所鑑定は客観的判断であるべきなのに、 当事者双方の利害を配慮した妙なバランス感覚でジャッジしてしまう傾向がある。 ③かかる裁判所鑑定を裁判官が盲信する現状からすると、 1人の鑑定人の判断に依存することは危険であり、 対立当事者に私的鑑定書を戦わせる方が公平。 ④欠陥判断は客観的基準に基づく法律事項の判断なのに、 裁判官は判断を放棄して鑑定や付調停で判断の下請をさせている。 ⑤裁判官が弁論準備で疑問点を率直に尋ねれば、 自ずから技術的事項も理解できるはず。

また、 鑑定人・調停委員の選任等については、 ①調停委員等が名誉職化しており適切な人選が為されていない。 ②大学教授も学生の就職の関係で建設業者との繋がりが深い等、 建設業界の影響力が強い建築学会を給源とすることは問題。 ③建築士にも構造・意匠・設備の専門の別があり、 事案に適した選任が必要。 ④鑑定人等の質を確保・維持するため審査制度・研修制度が必要。
このような最高裁との協議は今後も継続が予定されてはいるが、 我々としては、 各地域レベルでも鑑定人等協議会の継続的開催を求める等、 あらゆる機会を捉えて、 現場の裁判官との間でも意見をキチンと伝え、 要求していく必要があろうと思われる。

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