当協議会は、 未曾有の大被害をもたらした1995年1月の阪神淡路大震災をきっかけに、 欠陥住宅被害の根絶を願う弁護士・建築士・研究者・一般市民が結集して、 1996年12月、 被災地神戸で結成されました。
阪神淡路大震災において被害を受けた建物の多くは、 建築基準法令や公庫仕様書、 日本建築学会仕様書(JASS)の定める安全性を欠如していたことが判明し、 建築基準法令違反等の住宅が多数存在することを改めて我々に認識させました。 欠陥住宅被害の根絶は急務と言わねばなりません。
当協議会は、 結成以来、 全国各地で大会を開催し、 今回の横浜大会は第12回となります。 これまでの全国大会では、 建築基準法改正問題や住宅品質確保促進法、 鑑定制度のあり方等について議論・研究を行い、 その都度、 成果をアピールとして提言してきました。 また、 近年勝ち取られた数々の勝訴判決を 『消費者のための欠陥住宅判例(第1集)』 (民事法研究会・2000年5月)として刊行しました。
これらの裁判例においては、 「欠陥」 判断の基準につき建築基準法令等の定める技術基準とすることがもはや確立したものと言え、 重大な欠陥住宅に対しては建替費用をも含めた損害賠償請求を認める判断は大きな潮流と言えます。 さらに、 欠陥建築において監理を放棄した建築士に対しても損害賠償責任を認める裁判例が出される(大阪高裁2001年11月7日判決等)など、 建築基準法令等の遵守を重視する裁判所の姿勢が見て取れます。
ところが、 他方で、 建築基準法令等に違反する欠陥を認めながら、 「欠陥により生命・身体等に現実的被害や具体的危険が生じたと認められず、 依然居住している以上、 経済的価値も否定できないので、 再築費用の損害賠償は認められない」 などといった不当判決もいまだに一部で出されています。 これは、 建築基準法令等の定める基準が 「最低の基準」 であることを軽視ないし無視したものであり、 結果的に、 欠陥住宅の存在を是認し、 建築基準法令等を遵守しなくてもよいと認めるに等しいものと言わねばなりません。
そもそも建築物は、 国民の生命・健康・財産に重大な被害をもたらす虞があり、 かかる認識に立って建築基準法令は、 国民の生命等の保護のために、 建築物に関する 「最低の基準」 を定めています(同法第1条)。 すなわち、 建築基準法令は、 構造安全性能(同法20条)、 防火安全性能(同法21~27条)等を中心に詳細な技術基準を定め(単体規定)、 国民の生命等の安全性を守るために必要な最低限の性能を 「最低の基準」 として定めているのです。
このような建築基準法令の目的・意義に立ち返り、 これを遵守することの重要性、 また、 違反することの危険性を改めて再確認する必要があります。
当協議会は、 このような見地に立って、 下記のとおり意見を表明するものです。
記
1 建築基準法令や公庫仕様書、 日本建築学会の仕様書は国民の生命等の安全性を守 るための 「最低の基準」 であるから、 「欠陥」 判断の最も重要な基準として用いるこ とはもちろん、 同基準が補修の際の最低基準として用いられるべきこと。
2 訴訟手続や紛争解決手続等(鑑定判断も含め)において、 建築基準法令等の 「最低 の基準」 に満たないことを認めつつ安全であるなどといった判断が不当であること を再認識すべきこと。
3 建築基準法令が国民の生命等の安全性を守ることを目的とする以上、 かかる目的 の達成を目指す立場に立って、 解釈・運用すること。
4 建築確認や中間検査・完了検査においては、 建築基準法令の目的に鑑みて、 単体 規定も重視した運用が為されるべきこと。
2001年11月24日
欠陥住宅被害全国連絡協議会(欠陥住宅全国ネット) 第12回横浜大会参加者一同
第12回横浜大会アピール 「建築基準法令の目的・意義の再認識を求める」
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