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秋住事件についての報告

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吉岡 和弘(宮城・弁護士)
1 秋田県木造住宅株式会社とは
秋田県木造住宅株式会社 (以下、 県木住という) は、 首都圏における秋田杉の需要拡大を目的として、 秋田県、 秋田銀行、 北都銀行、 秋田県木材産業協同組合連合会等による官民共同出資会社 (いわゆる第3セクター) として、 昭和57年10月6日に設立された (秋田県の出資比率25%)。
ところが、 平成4年の段階で県木住には170億円もの負債が生じ、 平成9年12月19日に臨時総会で破産を決定し、 平成10年2月26日に東京地裁で破産決定がなされた。
*   *   *
2 訴訟の提起
(1) 当事者
原告は、 平成2年12月20日から平成5年7月30日までの間に、 県木住が千葉県山武郡山武町において売り出した住宅を購人し欠陥住宅被害に遇った者24名である。
原告らは、 平成10年8月7日に秋田地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。
被告は、 県木住であるところ、 同社は破産しているため、 県木住の実質的経営者であった秋田県、 秋田銀行、 北都銀行と、 県木住の取締役であった者11名および監査役であった者4名を被告にした。

(2) 理論構成 (その1) 共同不法行為
① 民法719条1項前段 (県木住と秋田県、 秋田銀行、 北都銀行の共謀又は共同実行)
理論構成の第1は、 県木住が故意に手抜きした欠陥住宅を販売するなど悪質な営業をしていたが、 秋田県と銀行はそれに共謀していたという点である。         
② 民法719条2項の共同不法行為 (県木住への幇助又は教唆)
同じ共同不法行為として、 秋田県と銀行は県木住への幇助又は教唆を行なった責任があるという構成である。 幇助とは他人の直接行為の実行を容易ならしめる行為である。
また、 過失による幇助も認められる (東京高裁昭和46年5月18日判時706号23頁)。 教唆とは、 他人をして不法行為の意思決定をさせることである。 また、 右教唆には過失による教唆も是認されていることは今日の通説である。

(3) 理論構成 (その2) 法人格の否認の法理
被告県は最大の出資者であり、 かつ副知事を取締役会長に、 職員を県木住社員に出向させていた。 実質的経営者は被告県であり、 県木住は法人格の濫用にすぎない。 つまり、 ダミーを使ったものに、 実質的な責任を問うていくものである。
この法理は最近では学説上も判例上も否定的傾向にあるが、 第3セクターの責任を追及する法理として新しい息吹きを吹込ませることはできないかと考えている。 けだし、 そうでないと、 自治体は、 都合の良い時は自治体が作った会社であるかの如く全面に押し出ていながら、 都合が悪くなると 「あれは単なる株式会社で私は株主にすぎない」 などと逃げを打つことを許すことになるからだ。 もともと第3セクターの立ち上げの手法ばかりが強調され、 全国的に設立が相次いだが、 肝心の後始末の方法は全く検討されていない欠陥がある。 こうした会社の責任を追及する法理を構築しなければならないし、 その際、 実質的経営者である銀行や自治体の責任を問うことが不可欠である。 法人格の否認の法理は、 こうした視点から敢えて主張し続けている。

(4) 理論構成 (その3) 名板貸責任(商法23条の直接又は類推適用)
本件で、 被告県は、 佐々木知事 (当時) が、 県木住のパンフレットに写真入りで登場し 「ご愛顧を願って」 と題し、 県木住は県が作った会社であるかの如き発言に終始していた。 また、 県は、 県木住が 「秋田県が母体の企業」、 「秋田県庁が設立した第3セクターならではの質と価格」 などと銘打つ広告を主要全国紙に繰り返し掲載することを容認し、 県木住なる会社は被告秋田県が設立した会社である旨一般消費者を誤信させた。
こうした事実関係からして、 秋田県には名板貸責任の直接又は類推適用がなされて然るべき事案である。

(5) 理論構成 (その4) 取締役の責任 (商法266条の3)
近時、 第3セクターが安易に破産の道を選択しようとする動きが目立つ。 第3セクターが破産した後も自治体や銀行は勿論、 取締役や監査役もなんら責任を問われないまま生産が進んで行く傾向に歯止めをかける必要がある。
第3セクターが破綻する原因の一つは、 能天気な自治体出身の取締役と、 自治体の権威や信用を利用して一儲けを企む民間出身取締役のもたれあい体質にある。 こうした無責任取締役の集団が第3セクターを駄目にして税金を食い潰すのである。 これら取締役が職務を行うにつき悪意重過失があったとして厳しく責任追及をしなければならない。
人の責任追及が不可欠である。

(6) 理論構成 (その5) 監査役の責任 (商法280条、 266条の3)
取締役の責任追及と同じ趣旨である。 とりわけ、 第3セクターでは粉飾決算や、 でたらめな企業運営が行われているにもかかわらず、 経営のプロたる監査役がこれを漫然と放任する傾向にある。 第3セクターの監査役は、 市民や県民の代表として監視の目を光らせる役割を担っていることを認識させなければならない。

(7) 損害論
被告県や銀行らの共同不法行為と相当因果関係にある損害 (補修費相当額はもとより、 引越費用、 借家賃借料、 慰謝料、 鑑定費用、 弁護士費用) 合計7億円余を請求する。
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3 若干の感想
第3セクターの会社が破産手続をとったのは、 私の知る限りで日韓高速船と県木住の2つである。 しかし、 第3セクター会社に破産手続という手法をとらせていいのか、 論点の一つになると思う。 なぜなら、 1つには、 実質的経営者である自治体や銀行が第3セクターの破産と同時に自らも破産するというならまだしも、 自らはピンピンしながらトカゲのしっぽを切るやり口は不当だからである。 2つに第3セクターイコール自治体・銀行という構図を信頼して取引に入った第三者に破産という名のもとに掌を返すように裏切る結果を生じさせるからである。 3つに実質的経営者である自治体や銀行は第3セクターの破産の時期を自由自在に選択しうるからである。 自らの不利益がもっとも少ない場面で (ということは逆に他の債権者が不利益を被る場面でもある) 破産申立をするか否かを選択するのはアンフェアであるからである。
訴訟提起後、 1年が経過し県や銀行の違法性が暴かれようとしている。 後日、 再び、 報告したい。

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